養殖のこと「養殖魚の種類」編

春のさかな

マダイ
マダイ/真鯛(養殖魚の優等生)

祝い事に欠かせないおめでたい魚。日本の養殖魚の中で生産尾数No.1。肝臓や腎臓の働きを良くし、胃腸などにも効果があります。また食欲増進、虚弱体質の人にも効果的です。マダイは古来よりその優雅な姿と色彩、洗練された味覚のため、魚の王様として珍重され、今でも「おめでたい魚」としてお正月や結婚式などの祝い膳には欠くことの出来ない魚の代表です。この魚は適水温(20〜28℃)が広く、しかも天然種苗に比べ成長が早い養殖用種苗(人工種苗)が安定して確保できることから、各地で盛んに養殖が行われています。

メバル
メバル/目張(大きな目が魅力的)

3色の保護色で釣り人をだます?メバルは日本各地の沿岸の岩礁地帯で群をつくらず、それぞれの縄張りを持ち、岩礁にへばり付くようにして常に海面を向いて暮らしています。体色は灰褐色(きん)、灰赤色(あか)、黒灰色(くろ)の3種があり、釣り人などからはそれぞれ別の種類の魚と思われているようですが、これはすみかの環境によって体色を変える(保護色)ためであり、3種は同一の魚です。「メバル」の由来は、目をみはっているような感じを受けることからきているようです。この魚は淡泊な白身の肉質であり、身離れの良さが抜群であることから、煮付けは同魚を使った料理の代表的な一品と言えます。

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夏のさかな

シマアジ
シマアジ/縞鯵(大きくなるとオオカミ!?)

魚体の60%以上が可食部。太平洋東部を除く熱帯及び温帯海域に広くすんでいます。大きくなってもせいぜい全長1m位にしかなりません。魚体がスレンダーな割には体高が高いことから可食部が60%以上と調理歩留りは優れています。 熊本地方では、“しまいっさき“などと呼ばれ親しまれている高級魚です。この魚の養殖は最近になって人工種苗の量産化がようやく可能となったことから、ブリやマダイ、ヒラメに次ぐ新しい養殖対象魚種となっています。しかし胃袋が小さく、ため食い出来ない消化器構造であるため、成長が遅いという課題を抱えています。

マアジ
マアジ/真鯵(食卓の定番!)

お店の水槽にいるマアジはその大半が養殖もの!餌付けがしやすく成長も良好。おいしくて栄養満点、食卓の定番!暖海性の回遊魚で、沖合を回遊するクロアジと定着性が高く瀬に付いているキアジの2種に分けられます。この魚はイワシ、サバ、サンマなどと並び水揚げ量の多い魚でありながら唯一養殖している魚で、活魚となると養殖ものがその大部分を占め、寿司や鮮魚店の水槽に泳いでいるマアジはほとんどが養殖ものと言えます。この魚はビタミンAが多く含まれており、人間の目を健やかにしたり、皮膚の新陳代謝などにも効果があります。

イサキ
イサキ/伊佐幾(夜遊びが大好きな魚)

岩礁地帯をすみかとする夜行性。刺身はもちろん、煮物や塩焼きで。特に釣り人には初夏の魚として親しまれています。この魚は中国の福建省などから天然種苗を輸入し養殖しています。又、この魚の料理法は大きいものは刺身、小さなものは煮物や塩焼きなどが適しています。

トラフグ
トラフグ/虎河豚(フグの王様)

猛毒を持つ高級魚。この魚の養殖は「噛み合う」、「膨れる」、「鳴く」などの他の魚にはみられない特性をもつ魚であり、仲間の体に傷を付けたり、飼育網を破るなど、養殖にあたっては厄介な魚と言えます。フグの代表的な特徴でもある膨腹習性(ふくれる)はフグを水から取りあげたり、つかんだりする強い刺激に対し、防御や威嚇のため、水や空気を胃に吸いこむことで起こります。又、怒った時には上下4枚の歯を噛み合わせて「グゥーグゥー」と鳴くこともあります。従来は高級料理店でしか味わえませんでしたが、養殖による生産が増えたことで、一般の料理店や量販店(身がきフグ)でも販売されるようになりました。肉質は白身でフグ類の中では最も美味で、てっさ(刺身)、てっちり(鍋)、唐揚げなどの味覚は絶品です。

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秋のさかな

イシダイ/石鯛(ゼブラ模様のしゃれた奴)

大きくなると性別で衣替えをする。成長速度が遅いため単独養殖しない(他の魚と一緒に養殖する)。ふ化後は、流れ藻に付いて北上し、成長と共にその多くは南西日本沿岸域に定着します。主に岩礁に生息し、貝類などの付着生物を食べて成長しますが、大きくなると産卵のために南下します。体重が200〜300gになると体色で雌雄の判別がし易くなります。即ち、雄はゼブラ模様が消え始め体色が灰白色となるのに対して、雌の体色は灰色で全体が黒っぽくゼブラ模様が残ることから、雌雄の判別はウエディングドレスを旦那様が、黒のモーニングを花嫁が着間違えたと憶えてください。この魚の養殖は人工種苗と天然種苗を利用していますが、1歳魚以降の成長が極めて遅く、出荷サイズの600g以上になるのに3〜5年を要するため、他の魚の様に単独で養殖することは少なく、ブリ(ハマチ)などの魚と一緒に養殖する。この魚は白身の高級魚であり、洗いや刺身は勿論のこと、塩焼きやバター焼きの他、長く保存したい時には味噌漬けにも適しています。

カワハギ/皮剥(おそうじ上手な魚)

ブリ(ハマチ)との混合養殖、飼育網のおそうじ役。皮を剥いで料理するからカワハギ。カワハギは、本州中部以南〜九州〜東シナ海にすんでいます。幼魚の間は内湾や沿岸近くで過ごしますが、大きくなるとやや沖合に出て過ごします。 この魚の養殖は天然種苗を利用していますが、食性がムラサキイガイなどの二枚貝類も好んで食することから、もっぱら本魚単独ではなく、飼育網に付いたム ラサキイガイなどの付着生物の掃除役としてブリ(ハマチ)などの魚との混合養殖を行っています。この魚は白身の肉質で、大きいものは刺身、小さいものはそのまま煮物やぶつ切りにして鍋物などに入れるのに適しており、とりわけそのきも(肝臓)は絶品!

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冬のさかな

ブリ
ブリ(ハマチ)/鰤(養殖魚のパイオニア)

成長によって呼び名が変わる出世魚。ふ化後約20cmまではホンダワラなどの流れ藻に付いて遊泳することからモジャコと呼ばれ、以後成長に伴って呼び名が変わることで「出世魚」と言われており、お祝い事に用いられる地方も多くあります。呼び名は地方によって異なりますが、関西では大きくなるにつれて、つばす(0.4〜0.5kg)→はまち(0.6〜2.9kg)→めじろ(3〜4.9kg)→ ぶり(5kg以上)と変わっていきます。養殖ものは西日本を中心に発展したことから、その呼び名はブリとハマチに2分され、概ね4kgより大きいものはブリ、小さいものはハマチと呼ばれています。

ヒラメ
ヒラメ/平目(陸でも育つ不思議な魚)

白身の高級魚。お肌や健康にうれしいコラーゲンが豊富。ヒラメは、成魚になると右側の眼が左側に移動して左側を上にして海の底で生活しています。雄に比べ雌の方が遙かに優れた成長を示します。この魚は海面養殖と陸上養殖の2つの方法で養殖しています。酸素の消費量が比較的少ない(動き回らない)魚であり、適水温(18〜24℃)が比較的一定 していることから、近年では後者の陸上での養殖方法が主流を占めています。ヒラメの肉質は白身でヒラメ・カレイ類の中では最も美味とされ、カレイ同様にコラーゲンを多く含み、皮膚を美しく、健康に保ちたい人には是非ともお薦めの魚です。ヒラメやカレイを煮て、冷ました時にできる煮こごりにはコラーゲンが多く含まれています。

カサゴ/笠子(忍法!隠れみの術!)

黒褐色から暗赤色まで−変化に富む保護色。北海道南部以南の岩礁地帯で群をつくらず、それぞれの縄張りを持ってすんでいます。体色が黒褐色から暗赤色まで魚によって変化に富んでいるのは、すみかによって体色を変える(保護色)ためです。この魚は無骨な姿をしていますが、白身で淡泊な肉質は絶品であり、大きなものは刺身にし、小さなものはそのまま唐揚げにするか、味噌汁や吸い物をお薦めします。